小児歯科医の独り言 自閉スペクトラム症の歯科治療

今回は自閉スペクトラム症と歯科治療について書きたいと思います。自閉スペクトラム症の方はイマジネーションに障害を有するため、はじめての場所や人が苦手であることが多く歯科受診において、問題行動を示すことがあります。その一方で、自閉スペクトラム症の方は抗精神薬などを服用している場合、薬の影響でう蝕予防には欠かせない唾の出が悪くなったり、極端な偏食がある場合、虫歯を誘発し易い食事しかとれなかったりで、虫歯のリスクが高くなる傾向にあると思われます。そのため何れ歯科を受診することになる可能性は高いと考えられます。虫歯が重症化してからの受診では、本人が歯科医院に慣れる間もなく治療しなければならなくなり、歯科医院を受診した時には全身麻酔などの対応が必要になるケースもあります。そのため私は自閉スペクトラム症の診断がついたら虫歯が無くとも早期に歯科医院を受診して慣れた歯科医院を作る事が重要であると思います。これは万が一虫歯になった時の備えになりますし、虫歯や歯ぐきの病気の予防になります。では、歯科医院を受診すれば簡単に慣れられるのかと言えばなかなか難しいのが現状です。歯科で自閉スペクトラム症の方の対応する場合、TEACCHプログラムという教育プログラム中の構造化という方法を使用します。これは想像力が弱い自閉スペクトラム症の方に現在、求められている行動を視覚化して伝達する方法です。構造化には行程を写真や絵などで伝達するスケジュールという方法があり事前に歯科の現場で行うことを伝達することができます。この方法がどんな方にも有効かというと自閉スペクトラム症の症状がバラエティに富んでおり、発達年齢も関わってくるので一概に言えませんが、予定の急変が苦手だったり、新しい環境が苦手な方には有効な事が多いです。ただ、乱用は避けた方が良さそうです。ご自身が自閉スペクトラム症である作家の東田直樹さんは〝僕が飛び跳ねる理由〟という著書の中でスケジュールを用いると守らなければならないという強迫観念に駆られて辛いと書かれています。ひとりの意見であるとは言え、言葉でのコミュニケーションが苦手な文字通り声なき自閉スペクトラム症患者さんの訴えですので無視できません。一度、パターンが出来上がってしまうと必要なくなることを多く経験しますし、最初から必要の無い方もいらっしゃいます。その方の特性に配慮して杓子定規な対応は避けるべきと考えます。


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